絶対幸せにならないで!

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Aくんへ
老婆の毎日日記の老婆の最愛の夫、A将軍にならって、僕もきみのことをAくんと呼ぶことにします。
Aくん、あなたを好きになってから7年が経ちました。どこが好きとか、なにがきっかけとか今となってはよくわからない。ただあの公園で出会った時から僕の人生はきみ一色だった。だけど今日、この手紙をもってこの気持ちを終わらせることを決めた。だから最後に僕の想いを綴ろうと思う。
初めて会った日、泣きながら話す僕になにも変わる必要はない、そのままでいいと言い切ってくれたよね。その言葉で僕は地獄のようだったこれまでの日々が救われたような気がしたんだ。味方がいないと思ってた僕の世界で、きみはずっと僕の味方でいてくれた。誰1人関係ない、僕に関わりたくないと思うのが普通なのに。きみは覚えてもいないのかもしれない。でもそれでいい。きみは僕を否定しなかった。わざとらしい肯定もしなかった。ただ普通でいてくれたことがうれしかった。修学旅行も体育祭もプールも楽しかったよね。中学生の時は2人でピクニックにハマって、もう取り壊されちゃったけど日輪公園とか、香坂山運動場の芝生を借りてピクニックをした。ラーメン食べに行ったり、新作が出るたびピョン助のガチャガチャを回しに行ったりしたね。
僕はきみと付き合いたいと思っていたはずだった。でも今は違う。僕にとってきみはもう、好きな人を超えてしまった。もう自分がなにがしたいのかわからなくて苦しい。好きすぎて苦しい。ずっと、ずっと苦しかった。
きみひとつお願いがある。どうか、ずっと笑っていてください。世界に絶望せず、花道だけを歩いていって。僕にとってきみは恋愛なんぞ不純だと思うくらいにステキな人、素晴らしい人だから。
あなたが好きです。今も昔もこれからも。どんな関係であれ、僕はきみを愛し続けると思います。だからどうか幸せになってください。きみの幸せだけを願っているよ。
最後に。あなたと出会って7年、僕に恋をさせてくれてありがとう。きみにとって僕は、きっとただの友達で、それ以上でもそれ以下でもない。そんなことわかってる。そもそも僕がきみのことを好きだなんて知らなかったでしょう?ずっと隠してきたんです。あなたの恋人になりたかった、でもならなくてよかった。
僕と出会ってくれてありがとう。あなたはずっと僕の光だった。あなた以上の人にこの先出会えないと思います。あなたを超える人はいません。僕は断言する。あなたは最高です。どんな関係であれ、この先もずっと仲良くしてください。僕たちはこれからも友達で、親友で、幼馴染同盟だから。別にさよならじゃない。だからこれはきみへというより、僕のかつての恋心へ送る手紙ということになる。
Aくん、ありがとう。
僕を救ってくれて、本当にありがとう。
さようなら。

2026.11.27
そらより




「なにっ、これ……」

どうやら見てはいけないものを見てしまったみたいだ。手が震える感覚を覚えつつも、文字を追うのをやめられない。そこにはたしかにそらの文字で、出来事全ては知っているはずなのに、おれの知らない世界がどこまでも広がっていた。
そらがカバンをひっくり返したとき、遠くに弾き飛んだらしい。拾って渡そうとしたらもう階段を降り始めてたから、後で渡そうと一旦自分のカバンに入れてしまったそれを卒業式が終わって家に帰ってから、返しそびれたと思い手に取った。そんなに重要なものではないのならこちらで捨ててしまおうか、確認のつもりで開いただけだったのに。
Aくんって……おれ?
そうとしか思えないけど、でもなんで?今までなにも言ってこなかったのに?

「虹ー、引っ越しの支度はー?ダンボール足りる?」

いまならまだ間に合う。明後日の引っ越しまでにはそらに真意を聞く時間もある。

「虹!聞いてるー?明日先に送っちゃう荷物だけ廊下出しといてよ」
「わかってるって!」

つい大きな声が出た。今は引っ越しどころじゃない。
なんだこれは。おれは手紙から目が離せなかった。なにか恐ろしい、重くて危険な予感。悪霊が自分を見つけて憑こうとしてくるような、逃げたくなる気持ち。おれは圧倒されていた。そらは多分、これを読まれることを望んでない。気持ちを知られることすら。どうすればいいの。おれはこれを、これを見た事実にどうすればいい?考えれば考えるほどに答えは出なくて、結局おれはそれを机の棚の奥に閉じ込め、そのまま東京へと飛び立ってしまった。