明かりもまばらな人気のない廊下を駆けていく。
生徒と教師のほとんどが校庭に集まっている中、僕はある場所を目指して足を動かしていた。
『ただいま装置の不具合で、予定より早く花火が上がりました事をお詫び致します。打ち上げの予定は装置が直り次第変わりなく行われ――』
スピーカーから流れた放送が、僕の胸を締めつける。
今の花火が偶然に打ち上がった物なら、尚更に。
まるであの二人がよりを戻す事を祝福しているみたいな、そんなロマンチックなシチュエーションを思い出す。
「灯は……なんて返事したのかな……」
そう呟いて、ふるふると首を振った。
知りたい、けど……知るのが怖い。
ふとピロンッと軽快な音が鳴って、ズボンのポケットに入れっぱなしだったスマホの画面を開く。
“ごめん、今気づいた”
灯からの通知。
震える指先が液晶に触れる寸前で止まる。
なんて返事をすればいいか、分からなかった。
“千冬はどこにいるの?行くから教えて”
“ねえ千冬?メッセージ届いてる?”
“どうかした?”
“話したい事があるから返事ほしいな”
そこまで読んで、唇を噛み締める。
今、灯に会ったらきっと泣いてしまう。
スマホの電源を切って、再びポケットに直す。
そして屋上へと続く薄暗い階段を、ひとりぼっちで上っていった。



