「お前にはそれだけ言っておきたかったんだ……隠れてコソコソ告白するのは性に合わないし。……それじゃあ、俺はもう行くよ」
「うん、また……」
手のひらをヒラヒラと振りながら「じゃあな」と去って行く爽君の背中を見送り、僕はその場で立ちすくむ。
窓の向こうから聞こえてくるJ-POPサウンドが鳴り止み、ステージを見届けた観客達の盛大な拍手が辺りに響き渡っていた。
うつむいたまま、風に揺れるスカートのフリルを眺める。
後ろ手に持った“コスプレ喫茶”の看板が壁に当たり、コツンと小さな音を立てた。
心が、まだ整理できない。
爽君の告白を聞いて……灯はどう返事をするだろう。
二人は幼なじみで、元々は恋人同士で……どっちも優しくて真っ直ぐで。
「お似合い、だよね……やっぱり」
誰に聞かせるわけでもなく呟いた一言が、鋭く自分の恋心をえぐった。
もしも二人が上手くいって、また付き合う事になって。
それじゃあ……僕の気持ちはどうなるんだろう。
「わぁ、可愛い!メイドさんだ~」
「すみません、どこの出し物ですか~?」
同い年くらいの女性客達から声をかけられハッとする。
すかさず手にしていた看板を胸の前で掲げた。
「三年三組のコスプレ喫茶です!よければご案内しますよー!」
ざわつく心を無視して女性客二人を案内する。
何かをしていないと、今すぐこの場でうずくまって弱音ばかりはいてしまいそうだ。
そんな事をしてるくらいなら、少しでも売り上げを伸ばすために動く。
灯との最後の文化祭なんだから、僕も後悔なんて残したくない。
爽君の告白。
その事を頭から振り払うように、僕は必死に呼び込みをしていた。


