僕らフラれた受け同士


爽君が壁から離れ、僕へと体を向ける。

その真っ直ぐな瞳からは、強い決意を感じた。


「今日の文化祭が終わったら、もう一度……灯に告白しようと思ってる」


文化祭を終えての告白。

それは皮肉にも僕と同じ考えで、待ってくれと言いたいのを必死に堪えた。

僕にそんな事を言う資格なんて、ないから。

誰かを……灯を想う気持ちが止められないから爽君も告白を決めたんだろう。

それがどれだけ勇気のいる事か。

痛いほど分かる、僕も同じだから。

だからこそ、止めるなんてできない。


「あいつとあんな別れ方した事を、いつまでも引きずって後悔したくないんだ」


爽君が目を閉じて、一年前の“あの日”を思い出すように呟く。

ケンカ別れのように離ればなれになった灯と爽君を思い出し、僕の胸が強く締めつけられた。

あの頃から爽君は……灯を。


「だから、もし……千冬が灯と付き合ってないならこのチャンスに賭けようと思うんだけど……二人は今、付き合ってるのか?」


その言葉にノドの奥で声がつまる。

今、“恋人”だって言えば……爽君の告白を阻止する事ができるかもしれない。

“ごっこ遊び”でも、恋人だよ。

悪魔が囁いたのは、ほんの一瞬。

僕はぎゅっと拳を握った。


「……ううん、付き合ってないよ」


どこかぶっきらぼうになった言葉には、正直に答えた事への僅かな未練が残っている。

爽君は気にしていないように「そうか」と安心したように少しだけ笑った。