僕らフラれた受け同士


「本当にごめん……!」


「もういいって、わざとじゃないんだし」


深々と頭を下げ、近くの出店から慌てて貰ってきた冷たい保冷剤を手渡す僕に、爽君が眉を八の字にしながら笑った。

受け取ってもらえた保冷剤が爽君の強打した頭を冷やしている。

人通りの邪魔をしないように使われていない通路に並び立ち、僕は改めて辺りを見渡す。


「あれ、なんかお客さんの数が減ってる……?」


僕が呟くと、爽君も周囲をぐるりと見回し「そうだな」と口を開く。


「さっき校内放送で案内があった。もうすぐ校庭に設置されたステージでアイドルがパフォーマンスするらしいから、それでじゃないか?」


「ああ、なるほど」


それで皆、校庭に移動してるのか。

その間は集客が見込めないとなると、これは売り上げにひびきそうだな……。


「…………」


「…………」


僕らの間に沈黙が流れる。

手持ち無沙汰でコスプレ喫茶と書かれた看板を見つめていると、隣から爽君の声がした。


「ちょっとだけ、宣戦布告してもいい?」


「え……宣戦布告……って?」


「灯の事」


ドクンと胸が跳ねる。

ここで灯の名前が出るなんて思わなかった。

爽君が背後の壁に体を預けて天井を見上げている。


「名前は確か千冬……だっけ?お前も灯の事、好きだろ?」


「あ、ぼっ……僕、は――……」


「隠さなくていい。お前は顔に出やすいタイプみたいだし……別にそれに対して文句とかを言いたいわけじゃないから」


爽君がちらりと僕を見た。


「それで本題なんだけど……俺も、まだ灯の事が好きなんだ」


窓の外から爆音の軽快な音楽が流れる。

それはこの場の空気と正反対に熱く、はしゃぐ観客達のかん高い声が真っ白になった僕の頭をかき回すように通過していった。