僕らフラれた受け同士


「は?お前客に向かって何を偉そうに――」


「警備員、呼びますよ?」


ニコリと微笑む灯の口元。

だけどその瞳は冷ややかで、男性客は小さく舌打ちするなり僕へと伸ばしていた手を引っこめる。

大人しくなった相手を見て、灯が僕へと耳打ちした。


「ここはボクに任せて、千冬は少し外の空気を吸って休んできなよ」


「いや、大丈夫!この忙しい時に僕だけ休めないって」


「指先、震えてるの……気づいてない?怖かったんでしょ。無理しないで」


そう言われ、初めて自分の手を見る。

小刻みに振動するそれを目の当たりにして、ようやくトラウマに近い恐怖心を体が感じていた事に気づく。

確かにこのまま働いても皆に迷惑をかけるだけかもしれない。


「うん、分かったよ……じゃあ休むついでに呼び込みもしてくるね」


「ん、気をつけて」


僕は案内用の看板を手に教室を出た。

廊下は生徒とお客さんでごった返していて、その隙間を縫うように看板を掲げて声を出す。


「三年三組、コスプレ喫茶やってまーす!ぜひ遊びにきてください!」


こうして声かけしてれば、興味を持ったお客さんが来てくれるかもしれない。

そう思ってたくさんの人に見えるようにとさらに看板を高く上げた……その時。


「痛っ!」


勢いがありすぎたのか誰かに看板がぶつかりゴッと鈍い音が鳴る。

ヤバい、謝らなきゃ――!

真っ青になり振り返ると、そこには見知った人物が頭を押さえていた。

僕は思わず名前を呼ぶ。


「爽君……!?」


なんの因縁なのか、灯の元恋人である彼は僅かに涙を滲ませながら僕を見て目を瞬かせていた。