僕らフラれた受け同士


「松田君、このドリンク3番席にお願い!」


「分かった、任せて!」


銀色のトレイの上に乗ったドリンクを受け取り、指定された席へ運ぶ。

(ひるがえ)したスカートがふわりと揺れるのも、今は気にならない。

それぐらい僕らのコスプレ喫茶は繁盛していた。


「お待たせ致しました、こちらご注文いただいたオムライスです」


すぐ近くで接客をする灯に、女性のお客さんのかん高い声が響いた。


「お兄さんカッコいいですね!」


「あのあのっ、写真って撮っても良いですか?」


スマホを取り出す二人組の女性達に、灯はそっと人差し指を立てて自分の唇に添えた。


「申し訳ございません、お嬢様方。店内は撮影NGとなっておりますので、どうかご了承くださいませ」


執事になりきってのアドリブに、女性客達が素直にスマホをカバンに直す。


「ご協力ありがとうございます、ごゆっくり楽しんでくださいませお嬢様」


妖艶に微笑む灯に、周りのお客さん達の視線も釘付けだった。

スゴいなぁ、灯は……僕なんて接客だけでいっぱいいっぱいなのに。


「お待たせ致しました!ご注文のコーラです」


売り上げに貢献するため、せめて明るく振る舞おうと笑顔でお客さんに接する。

すると同い年くらいのお客さんが、僕の服装を眺めてニヤニヤと笑みを浮かべた。


「ねーねー、お兄さんメイド服似合ってるね~」


「え?そ、そうですか?」


「ってかさー、この下って男物の下着履いてるの?それとも女物ー?」


「ちょ――」


伸ばされた男性客の手が僕のスカートを掴む。

咄嗟に両手を使い布がめくられるのを阻止した。

その様子を見てケラケラと男性客が笑う。

その姿が僕の元彼と重なり、僅かに体が震えた――その瞬間。


「お客様、それ以上はお止めください」


凛とした灯の声が響いた。