「いいじゃん、千冬によく似合ってるよ」
「自分の女装姿は見せてくれなかったくせに、僕の女装をコスプレやる条件にするのはズルくない……?」
「えー、なんのことかなー?」
灯がすっとぼけたように視線を天井に逸らした。
その姿を見てぐぬぬと唇を真一文字に引き締めて肩を震わせる。
“松田千冬が女装するならどんな服でも着る”
去年の売り上げ1位を誇る灯の、そんな横暴とも言える提案に逆らう者は薄情にもこのクラスにいなかった。
もちろん、僕も含めて。
だってそれって、つまりは僕が女装しないと灯はコスプレしてくれないって事だから。
じゃあもう仕方ないってなって、クラスの男子の中で僕だけ一人女装という恥ずかしい状態になっているわけなんだけど……。
それでも、そのおかげで灯のこの執事姿を見られたんだと思うと……やっぱり嬉しさが勝つ。
「あとで灯の写真撮ってもいい?」
「どうせなら今撮ろう。文化祭中は忙しくて無理だろうし終わればクラスTシャツに着替えるし」
「いいの!?じゃあそこに立って――」
「千冬も一緒に、ね?」
灯だけに構えたスマホの画面がこてんと傾く。
僕も一緒に撮るのか……え、この格好で?
そう感じたけど、有無を言わせない灯の笑顔の前では何も言えず……僕らは執事とメイドで仲良く並んでツーショットを撮った。
「皆ー!揃ってるか?もうすぐ学校関係者や皆のご家族、一般客が来場する!各自配置について接客してくれ!」
吉元先生の号令がかかり、各々が返事をする。
僕と灯の、三年生最後の文化祭が始まろうとしていた。


