一夜が明けて、天気は快晴。
遂に文化祭を迎えたその日、僕は準備を進めるコスプレ喫茶で念願の光景を目の当たりにしていた。
「矢野君、めっちゃ似合ってる!」
「でしょー!?服に合わせて髪型も変えてるの!やっぱり売り上げ1位狙うなら、灯君に力を入れなきゃでしょ~!」
「これもうウチが優勝じゃねぇの!?」
ざわめくクラスメイト達の視線の先に立つ灯。
彼は黒い執事服に身を包み、白い綿の手袋を真剣な眼差しで着用していた。
“変えた”という髪型はいわゆるこぼれ毛オールバックというやつで、左側の毛束が僅かに落とされていて……正直ヤバい。
元々の見た目の可愛さを残しつつも、カッコよく仕上がっていて色気すら滲み出ている。
こんなメロい存在がこの世にいていいのだろうか。
ふと盛り上がるクラスメイト達の間をかき分けて、灯が僕へと近寄った。
「千冬、なんでこんな隅っこにいるの」
「え?」
「千冬が言ったんじゃん。ボクの“カッコいい姿”……見たかったんじゃないの?見るなら最前列で見てほしいんだけど」
――これは千冬のためのコスプレなんだから。
そうこっそりと呟いた灯は意地悪く笑う。
彼の“恋人ごっこ”による僕へのサービスは今日も健在らしい。
僕は恥ずかしさから目を伏せ、頬を指先でかいた。
「いや……そうしたいのは山々なんだけど」
僕は改めて自分の姿を見る。
足首まであるエプロン付きのシックなメイド服。
頭にはフリルたっぷりのレースカチューシャを乗せた高校生男子の姿がそこにあった。


