僕らフラれた受け同士


目前に迫りくる分厚い木の板。

突然の事に口元が引きつり、身動きができない僕の体を誰かが強く抱き寄せた。

ふわりと香るシトラスの香りが鼻先をくすぐる。


「――っ!クソッ……けっこう重いな……!」


左手で僕を抱き締め、右腕全体で板を支える彼がそこにいる。

丸くした目に映る灯の辛そうな表情に、咄嗟に名前を呼んだ。


「と、灯――!?」


慌てて僕も両手で板を押し返す。

それを見ていた爽君と、二人の男子生徒もやってきてようやく木の板の圧迫感から解放された。

謝罪する男子生徒達が再び木の板を運ぼうとしたのを見て、隣にいた爽君が声をかける。


「危なっかしいから俺も持つの手伝ってくる」


「ボクも手伝う?」


「いや、灯は買い出しに行ってたんだろ?少し休ませてもらえ……それじゃあな」


運ぶ人数が三人になり安定した木の板が運ばれていく。


「灯、ごめん……!僕がぼんやりしてたせいで……!」


僕はすぐさま灯に話しかける。

彼の右手は腕まで赤みを帯びていて、どれだけの負荷がかかっていたかは一目瞭然だった。


「もう、このくらい全然平気だから……そんなしょんぼりしないでよ。それで千冬は?どこも痛いところない?」


「灯のおかげで僕は大丈夫だけど――」


「そっか、千冬にケガがないなら何も問題ないね」


そう言い放つ灯が優しく微笑む。

その柔らかな口調と瞳に、胸の奥がキュンと声を上げる。

いつだって、真っ先に助けてくれるのは灯だ。

こみ上げてくる彼への想いはもう抑えようがない。