「いいけど何?荷物が重いから手短にね」
「ああ、去年やった出し物の看板なんだけど、どこにやったか知ってる?今年も俺のクラス女装喫茶なんだよ、だからそれ使おうと思って」
「え、どうだろ。邪魔だからって壊したんじゃなかった?……っていうかさ、去年は回避してたけどまさか今年は爽も女装するの?」
「なんだよその嫌な笑い方。いっとくけど俺は調理担当だから見に来てもお前が期待したような面白い物はないぞー」
茶化すような爽君の回答に、灯がつまらなさそうに唇を尖らせた。
そっか……去年は灯と爽君、同じクラスだったんだっけ。
バレンタインの日、灯の家の前で話していた二人を思い出して握った袋の取っ手にぎゅっと力がこもった。
会話に入れず視線を逸らした先に、大きな長方形の板を運ぶ生徒が見えて、気まずさから逃れるように声をかける。
「ねえ!それスゴい大きさだね、何に使うの?」
「スゲーよな、これ階段の近くに置く看板なんだよ!三階の出し物はこんなのですよーって生徒会が描いてくれるらしくてさぁ」
汗を滝のように流しながら板の片側を運んでいた男子生徒がニカッと笑う。
もう片側で板を持っていた別の男子生徒が彼をジトッと睨んだ。
「お前、もう少ししっかり持てよ!あと少しなんだから!」
「分かってるって――うわっ……!」
板の説明をしてくれた男子生徒の足が、床に転がっていた木材に当たって体勢を崩す。
バランスを失った大きな板が、僕に向かって倒れてくるのが見えた。
「えっ――」


