そのまま部屋に入ろうとする爽君を灯が「待って」と引き止める。
「爽、父さんから電話あってさ。今日も夕飯、一緒に食べていけって」
「ん、分かった……ここ最近、毎日邪魔して悪いな」
「いいよ別に。照も喜ぶし、おじさんとおばさんはまた出張なんでしょ?」
「一人も楽だけどな。じゃあまた後で行かせてもらう」
全く入っていけない会話が終わり、今度こそ爽君がカギを開けて自分の家に帰っていった。
緊張感が解けたかわりに、言いようのない気まずさが僕にまとわりつく。
幼なじみとは聞いていたけど……一緒に夕飯を食べようと誘われるくらい、深い関係だったんだ。
家族ぐるみで仲がいいんだろうな。
モヤッとした感情が心にじわりと広がる。
まだ冷たい、外の空気のせいだろうか。
首から下げたままのペアリングが触れている場所がやけに冷たく感じた。
「……千冬?どうしたの?」
灯が僕の顔を覗き込む。
思わず顔を背けながら、へらへらと笑った。
「いや、ほら……もうすぐ三学期でしょ?クラス替えがあるじゃん!って思って――」
言いながらチラリと灯の目を見る。
そして消え入りそうな声でこう続けた。
「だから……灯と同じクラスになれたらなって」
そうなれば、この胸のモヤモヤも少しは晴れるかもしれない。
ここにきて灯と“別クラス”という現実がこんなにも息苦しい物に感じるなんて……思わなかった。
それはまるで僕と灯の距離をそのまま現しているかのようで、つい彼と“同じクラス”である爽君を羨んでしまう。
家も隣、幼なじみ、家族ぐるみの付き合い。
せめてクラスくらいは、僕も灯に近づきたかった。


