僕らフラれた受け同士


「っていうか千冬を一人で帰すとかボクが心配だから、むしろ送らせてほしい……いいよね?ね、千冬」


その言い方は、ズルい。

結局、僕は灯の前では意地すら通せないらしい。


「じゃあ照、ちょっと出るから留守番よろしく」


灯が照君に一声かけて、僕と一緒に玄関を出る。

その瞬間、この時間に帰ろうとした事を即座に後悔する事態に陥った。

灯の住む部屋の、すぐ隣の部屋。

目の前にいた人物……彼は、今まさに自宅へと帰ろうとしている所だった。


「あれ、爽……今帰り?」


灯が彼の名前を呼ぶ。


「あぁ、サッカー部の助っ人頼まれてさ」


それに応じる爽君が、灯の隣に立つ僕を見た。

視線を感じたのは包帯が巻かれた手首。

彼はそれを見ると僅かに目を見開いて、小さく口を開く。


「それ……痛めたのか?」


「えっ?」


「……手当てされてるけど、一応病院でも診てもらった方がいいと思う。学校近くの大沢整形外科が丁寧でオススメ。……お大事に」


「あ……ありがとう」


灯の元彼である彼……爽君からは、不思議ととげとげしい物を感じない。

むしろ僕の事を心配してくれるのが、よく伝わる。

爽君も、優しい人なんだろうな。

灯の恋人、だったんだもんな。

……ごっこ遊びの関係で、なおかつ灯からもらってばかりの僕とは違う。

その事実がチクチクと、僕の狭い心を突き刺した。