僕らフラれた受け同士


「ただいま兄貴。玄関に靴あったけど爽君が来てる、の――」


“爽君”――その名前に心臓がドクリと跳ね、声のした方を見た。

現れた人物と僕の目が合う。

背の高い、学ランを着崩した金髪の不良がそこにいた。

彼は僕を睨むように目をキツく細めた後、耳に開けたピアスを光らせながら首を僅かに傾ける。


「アンタ、誰?」


「えっ、あっ……僕はその……」


眉間にシワを寄せたその不良の放つ威圧感に押され、ついしどろもどろになってしまう。

見かねた様子で、すかさず灯が口を挟んだ。


(てる)、この前作った眼鏡どうしたの?ちゃんとかけろって言っただろ……人相悪すぎ」


「無理、あんなダサい黒縁のとか付けたくねぇ」


照と呼ばれた不良男子がふてくされたように唇を尖らせ髪を掻いた。

それを見た灯が深いため息を吐いて、申し訳なさそうな視線を僕に向けた。


「ごめん千冬、アイツが弟の照なんだけど……視力が悪くてさ。裸眼だといつもああやって睨みつけるような目つきになるんだ」


「あ、そうだったんだ」


「別に千冬に怒ってるとかじゃないから安心してよ……ほら、照!ちゃんと挨拶くらいしろ」


「……」


照君は僕をまじまじと見つめた後、小さく頭を下げてその場から去って行った。

リビングには再び、僕と灯の二人だけが残される。

規則正しく動く、時計の秒針の音がやけによく聞こえた。


「本当ごめんね、千冬……アイツ反抗期で。後できちんと叱っとくから」


「う、ううん、全然いいよ!気にしてないから!」


口ではそう言ったけど、嘘だ。

本音を言うと少し気にしてる。

上手く表現できないけど……歓迎はされていないような気がして。