僕らフラれた受け同士


数メートル先、保健室の目の前に到着する。

だけどドアには既にカギがかけられていた。

“留守にしています”――

そんな手書きの貼り紙を見て、灯が僕に視線を向けた。

それに僕はニコッと笑う。


「僕なら大丈夫だよ、もう全然痛くないし!」


そう言ってぷらぷらと手を振ってみせるけど、灯は納得していない様子だった。

もう一度貼り紙を見つめた後、何かを決めたように僕へと視線が向けられる。


「千冬……ウチに来ない?」


「へっ?」


告げられた言葉を理解するのに数秒かかった。

パチパチと目を瞬かせながら灯の言葉を待つ。


「ウチなら手当ての道具があるから、応急処置くらいならできると思うんだけど……どうかな……?」


「い、いや、そこまでしてもらうとか悪いし――」


「待って、やっぱりボクのワガママに付き合って。……このまま手当てもせずに千冬を黙って帰すの、嫌なんだ」


そんな言葉を真剣な顔で真っ直ぐ見つめられながら言われると、もう拒否なんてできなかった。

大人しく首を上下に動かして頷く。

そんな経緯で、僕は初めて灯の家にお邪魔する事になった。

学校を出て灯を先頭にして歩く。

妙に緊張してしまって、道すがら灯と何を話したかすら覚えていない。

気づけば五階建てのマンションの三階にある一室の前まで来ていた。


「着いた、ここだよ……どうぞ」


灯がカギを開けて中に入り、僕を待つ。


「お、お邪魔します……!」


声を上ずらせながら片づいた玄関に足を踏み入れた。