閉ざされた窓の向こうから運動部のかけ声が聞こえる。
心なしか、灯の呟きはそれよりもか細く聞こえた。
「恋人っぽい事ができないって…えっと、例えば?」
「手を繋いだり、キスしたり…あと、その先も」
「へぇ…」
その先っていうのは…そういう事だよな。
でも“恋人っぽい事”って、つき合っていれば自然にできるんじゃ…。
少なくとも、僕はそうだった。
僕の場合は相手が手の早いやつだったから、尚更そう思うのかもしれないけど。
「灯は潔癖症とか?他人に触るのが無理とか…」
「さっき握手したばかりでしょ?それはない」
そう返されて「だよね」と頷く。
じゃあ何でだろうと腕を組み考えていると、灯がぼんやりと窓の外に視線を向ける。
そして…ひとりごとのように声をもらした。
「分からないんだ。ボクがスキンシップを必要と思えないのか…そもそも、最初からアイツの事を好きじゃなかったのか」
「好き…じゃ、なかったの?」
「ボクとアイツ…爽は幼なじみでね。小さい頃から一緒にいるのが当たり前だったから…それを恋だって勘違いしたのかも」
「それは…」
違う、と思った。
灯はそうだったかもしれないけど、彼は本気で灯を好きだったんじゃないだろうか。
ただの憶測だけど、そんな気がした。
灯が微笑を浮かべてこちらを見つめる。

