その迫力に言葉を失ったのだろうか。
「チッ……!」
僕の元彼だったソイツは、逃げるように空き教室から去って行った。
再び辺りに静寂が訪れる。
灯はしばらくの間、威嚇するかのようにアイツが出て行った方角を睨んでいたけど、気配が消えるなり僕の元へと急いで駆け寄ってきてくれた。
「千冬……!大丈夫!?何もされてない!?」
「あ……だ、大丈夫、だけど――」
僕は灯の、流れるような一連の動作にすっかり見とれてしまっていた。
何か武術でもやってたのかな……?
「ん……?どうかした?」
「え……えっと、灯って強かったんだなーって……何か習い事とかしてたの?」
僕の疑問に彼は視線をさまよわせた後、小さく首を傾ける。
「習い事っていうか、今のは兄弟喧嘩で勝手に身についたワザっていうか……」
「兄弟喧嘩?灯って兄弟いたんだ」
「うん、中学生の弟が一人ね。反抗期で不良やっててさ……兄弟喧嘩で負けたくなくて、あれこれ試してたらいつの間にかできるようになってた」
「へ、へぇ……」
そんな理由であれだけ強くなれるなら、不良やってたら灯ってめちゃくちゃ強かったんじゃ……。
そんな事を考えていると、目の前の灯が心配そうな声を出した。


