「なんでお前がこんな所に来るんだよ」
反射的に後方へと下がり、ギロリとやつを睨みつける。
手の中のチョコが入ったラッピング袋にクシャリとシワがよった。
まさかコイツと再び話す日が来るなんて……!
フラれたあの日以来、全く接点がなかったから気を抜いていた。
その分、動揺が激しい。
「え、なに千冬~、お前バレンタインにチョコとか貰ったん?誰?同クラの女子?初めての彼女できた!?」
「……これは、別に貰ったんじゃない」
「じゃあお前が作ったん!?アハハッ、ヤバい!誰にやるのかは知らねぇけど、手作りとかめっちゃめちゃ重い男になってんじゃんウケる~」
「……っ……」
コイツ、無神経なところも全く変わってないな。
それでも“重い男”と言われている事は間違っていないような気がして、僕は拳を握った。
噛み締めた唇が震え、口内で鉄の味がする。
なんで僕、こんなやつと付き合っていたんだっけ。
「もーらいっ!」
「っ!ちょ、なにするんだよ!?返せ!」
一瞬の隙を突かれてチョコが入った透明な袋を奪われる。
その手が僕の真上で、もてあそぶように左右に揺れた。
必死に背伸びをして袋を取り返そうとするけど、背の高さで負けている僕の指はあと数センチ袋に届かない。
元彼は僕のその様子を見て面白そうに笑い声を上げたあと、ズイッと僕へ顔を近づけた。


