僕らフラれた受け同士


深い橙色の夕暮れに照らされた空き教室で僕は一人、灯が来るのを待っていた。

暖房の入っていない室内のひんやりとした空気が、緊張で火照った体を冷やしていく。

両手を擦り合わせて息を吹きかける。


「灯、まだ先生の手伝いしてるのかな」


数分前に灯から送られてきたメッセージを思い出した。

“先生に捕まったから手伝いで少し遅くなる”――そう短く書かれた文章が恨めしい。


「早く来ないかなぁ……」


呟いてスクールバッグの中からチョコを取り出し、中を確認する。

うん、大丈夫……溶けたりしてない。

ラッピングも崩れていない。


「……やっぱり手作りチョコって気合い入れすぎ……?」


今になって不安になる。

……確実に美味しくて、見た目も多種多様な市販のチョコを贈った方が喜んでくれたのではないだろうか。


「いや、でも……これは“恋人ごっこ”用に作ったチョコだし!うん、きっとおかしくないよね!」


今日までの努力をムダにしたくなくて、必死に自分に言い聞かせる。

そうしないとこのチョコを灯に手渡すのを、ためらってしまいそうだった。

あとは渡すだけ……渡すだけ。

バクバクと高鳴る胸が今にも張り裂けそうになった瞬間、スライドドアが開く音がした。


「あっ、灯――」


勢いよく振り向くとそこには……一番会いたくない人物。


「あれー?千冬じゃん、偶然だな……ってか話すの久しぶりじゃねー?」


僕の元彼だったソイツはケラケラと笑いながら相変わらずの馴れ馴れしさで僕へと近寄った。