「と、灯!?どうしたの!?」
「どうしたのって、千冬の姿が見えたから声をかけただけなんだけど……そっちこそどうしたの?」
「別にっ……な、なんでもないよ!」
まさかの本人登場に、肩掛けのスクールバッグを両手で覆い隠す。
灯は慌てふためく僕の様子を見てニヤリと口角を上げた。
「あれ……もしかして、なにか隠そうとしてる?」
「な、なんでもないってば……!」
「ふーん?そっか」
そう言うと灯は僕へと背を向けた。
「あ、ま、待って!」
このままじゃ完全にチョコを渡すタイミングを逃す……!
そう思い、とっさに灯の制服の袖口を引っ張る。
振り返る灯から視線を逸らし、僕はもごもごと口を動かした。
「あの……放課後に、一階の空き教室に来てくれる?」
それは今、思いつきで考えた二人きりで会うための約束。
ちらりと灯に視線を戻すと、彼はコクリと頷いた。
「分かった。期待しておくね?」
僕のバッグを見ながら楽しそうにそう告げる灯に、心臓がうるさく脈を早める。
もしかして、チョコの事に気づかれてる……?
「そ、それじゃまた!あとで!」
パタパタと足音を立てながら、逃げるように教室へと向かう。
気恥ずかしくて耐えられないのに、早く灯にチョコを渡したい。
そんなあべこべな気持ちのまま、時間が過ぎていくのを待っていた。
そしていつもより長く感じる授業が終わり、ついに放課後がやってくる。


