後日、僕の姿はキッチンにあった。
調理台には練習用にと買ってきた材料がどっさりと置かれている。
「これで揃ってる、よね?」
専用のスタンドの上にのせられたスマホ。
その画面に表示してある“簡単!生チョコレシピ”とにらめっこしながら手元の材料を確認した。
手作りチョコといえど、やる工程自体は少ない。
刻んで、溶かして混ぜて……冷やすか焼くか。
それだけ。
これなら僕にもできるはずだと高をくくっていたけど……やってみると、これがけっこう難しい。
「えっ……うわ、これ分離してる……?」
ツヤなど微塵もないチョコの表面。
「待って、何で……え?固まってない……!?」
冷蔵庫にどれだけ入れても、ドロリとして固まる気配のないチョコ。
もっと簡単なレシピを探し、作り方を勉強して試行錯誤を繰り返す。
灯にバレないように練習を重ね……そうして数週間が経ったころ。
「やった!コツが掴めてきた……!」
納得のいくチョコが完成したのは2月13日の夜中。
ベージュのクッキングペーパーを敷いた小さなカゴの中。
その中で佇む正方形の生チョコは、ココアパウダーで化粧をされて大人しく収まっている。
形も……そしてたぶん味も上手くできたと思う。
「あとは明日、こっそり学校で渡すだけ……!」
透明な袋に赤いリボンでラッピングを済ませ、努力の結晶たる生チョコを冷蔵庫の中に入れた。


