「だね……今日はもう帰ろうか?」
「うん、賛成」
甘酒を飲み干して空になった紙コップを、設置されていたゴミ箱に捨てる。
本当はまだ帰りたくなかったけど……この人の多さの前では気疲れの方が勝ってしまった。
「じゃあ、行こうか」
その場で解散せず、当然のように僕を家まで送ろうとしてくれる灯。
その優しさを噛み締めるように、ゆっくりと歩を進める。
道中、通りがかったカップルの会話が聞こえてきた。
「何お願いしたん?」
「バレンタインのチョコが上手く作れますようにーって」
「あはは、もう2月の話してんのかよ~」
バレンタイン。
チョコレート。
…………。
え、バレンタイン……!?
その言葉に僕はハッとする。
そうだ、元彼が甘いの苦手だったから今の今まですっかり忘れてた!
来月にはそんな重大イベントがあった!
バレンタインデーにチョコを渡すとか、まさしく恋人っぽいじゃないか……!
高鳴る鼓動のまま、ちらりと灯の横顔を見る。
灯はチョコとか好きかな……?
クリスマスにホットチョコレートを飲んでたし、さっきも甘酒を飲んでたから甘いの苦手ってわけじゃないだろうけど。
手作りチョコとか……喜んでくれる、かな……。
初詣で思わぬ目標ができた。
よし……決めた。
今年のバレンタインデーは、少し頑張ってみよう。
期間限定のこの関係が続いているうちに少しでも……後悔しないように灯との思い出を作るためにも。
そんな決意を胸に秘め、灯の手を強く握りしめた。
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