スルッと頬を撫でる灯の手がくすぐったくて、身をよじる。
彼の真っ直ぐな瞳と目が合う。
その顔が、ふてくされたようにムスッとした表情に変わった。
「今は…ボクの事だけ、考えててほしいんだけど」
その唇が動くのと同時に、添えられた手が離れていき…立ち尽くす僕はパクパクと口を開閉させた。
灯の事しか考えてませんけど…!?
言えない叫びが脳内で響き渡る。
許されるならこの場でゴロゴロと寝転がって悶絶したい…!
そんな事はもちろんできないから、必死に話題を変える。
「あっ!あっちのチュロスも…ほら、プレッツェルも美味しそう!行こう灯!」
「…あんまり急ぐと転ぶよ」
いまいち納得していないような灯を引っ張り、店へと向かう。
例え食いしん坊だと思われようと、この灯への想いに気づかれるわけにはいかない。
これは“恋人ごっこ”なんだから。
いつかは、終わってしまうんだから。
***
「ん~美味しい…!」
「千冬ばっかり食べてるじゃん。ボクにもちょうだい?」
「うん、いいよ。口開けて」
ホワイトチョコのかかったチュロス、塩っ気のきいたプレッツェル、シナモンたっぷりのアップルパイに…色んな物を食べた。
かわりばんこにフードを買って、二人で分け合う。
人の多いこの場所で行うその行為にも慣れてきたころ、最後に選んだシチューを食べさせ合いっこしながら僕はイルミネーションを見る。

