僕らフラれた受け同士


それはかすかな…でも、じんわりと残った暖かさを奪い去るには充分すぎるほどの風量だった。


「お待たせ」


ホットチョコレートの入った黒色のオシャレな紙コップを持って灯が駆け寄ってくる。


「はい、先にどうぞ」


そう言って僕にコップを渡し、灯は再び手を絡めてきた。


「と、灯…手、また繋ぐの…?」


「“繋ぎたいな”って千冬の顔に書いてた」


「え!?そ、そんな事…」


「違った?でも僕が繋ぎたいから強制、ね」


灯の一挙一動に、胸の鼓動がドクンと大きく跳ねる。

“恋人”からこんな風に優しく扱われた事なんて無かった。

元彼とは肉体関係がほぼだったからなぁ…。

クリスマスマーケットなんて話題すら出なくて“今日はどっちの家でする?”とかそんなのばっかで。

あぁ、思い出すとムカついてきた…。

灯と恋人だった爽君が羨ましい。

イライラを静めるように、ホットチョコレートを一口飲む。

ふわりとカカオが香るそれは包み込むような優しい甘さをしていて、僕の心を少しずつ穏やかにしていく。


「これ美味しいよ、灯――」


コップから口を離した瞬間、繋いでいない方の灯の手が僕の頬に添えられた。


「千冬さ、さっき…別の誰かの事考えてたでしょ」