僕らフラれた受け同士


「……こういう時、“恋人”なら分け合うんでしょ?」


それはカラオケボックスで教えた事。

あの時は個室で、他に人の目も無かったから僕も乗り気でポテトを食べさせたりしていたけど…。

僕は戸惑いながらその場で視線をさまよわせる。

見渡す限りの人。

この中で、それも男同士で食べさせ合いっこするのはかなりハードルが高いような…。


「どうしたの?千冬」


「あ…や、ちょっと気後れしちゃって」


一気に緊張してきた僕に灯が柔らかく目を細める。


「大丈夫…皆、自分の楽しい事に集中してて誰も気にしないよ。だからボク達も二人で“恋人ごっこ”を楽しもう?」


まるで勇気づけるように、ポケットで繋がれた手と手が絡み合う。

指と指が交差して、いわゆる恋人繋ぎになった状態に気づき顔に熱が集まる。

今日の灯が積極的すぎて、上手く顔を見られない。

その代わりにと、繋がれた指先を握りしめる。


「……同意してくれたって事でいい?」


灯の問いかけに僕はマフラーで顔の半分を隠しながら頷く。


「うん、じゃあ行こっか」


優しく微笑む灯の導きに従って足を動かす。

ホットチョコレートの店の前で足を止めた彼が、僕の顔を見た。


「買ってくるから。ちょっとだけ手、離すね」


「あ、うん」


心地良い体温が離れていき、解かれた手を冷たい風が撫でていく。