僕らフラれた受け同士


「じゃあ、行こうか」


灯がそう言って、僕の赤らんだ手を握り自身のコートのポケットにその手を突っ込んだ。

瞬間、暖かさを感じる指先。

灯が小さく笑った。


「ポケットにカイロ入れてるんだ、こうしてればすぐ暖まるよ。……ね?」


手の温度が高くなったのは、きっとカイロのせいだけじゃない。

握られたままの手から伝わる灯の体温にどぎまぎしながら、イルミネーションが照らすマーケットへと足を踏み出した。

人混みの中を進んでいくと、美味しそうな香りが辺りを包み込む。


「お店、いっぱいあるね。千冬は行きたい所ある?」


「うーん、そうだなぁ」


キョロキョロと周りを見渡す。

ホットチョコレートにチュロス、プレッツェルにシチュー…食べてみたいフードがたくさんある。


「千冬、ヨダレ出てるよ」


「嘘!?」


慌てて空いている方の手で口元を拭う。

灯がニヤニヤと僕を見つめた。


「冗談だよ」


「なっ……もう!」


「でも色々食べたいんでしょ?顔に書いてある」


図星を突かれて「うぐっ…」と声をもらす。

灯はポケットの中で握りしめた手に力を込めながら楽しそうに微笑んだ。


「いいよ、行きたいとこ全部行こう。でも買うのは1個ずつね」


「えっ、なんで?」


首を傾げる僕に、灯はそっと囁いた。