「あの日、文化祭でボク…女装してたんだ」
「え?」
「だから…女装。当日になって“普通の喫茶店じゃ集客力が弱い!”って女子に無理矢理…」
徐々に小さくなっていく言葉と、苦虫を噛み潰したような灯の表情。
…よっぽど女装するのが嫌だったんだな。
でも、良かった。
嫌われたわけじゃなくて。
僕は一安心しながら和やかに笑った。
「えー、灯の女装とか絶対カワイイじゃん!見たかったなぁ、もう少し粘って探せばよかった…あ、写真とか無いの!?」
「残念だけど無いよ。全部削除させたから」
「そっかぁ…」
あわよくば誰かに灯の写真を譲ってもらおうと思っていたのに…残念。
きっともう見られない、貴重な光景を見逃した。
唐揚げを口に放り込み、もぐもぐと口を動かす。
ふと、灯が口を開いた。
「写真は無いけど…千冬はクリスマスって空いてる?」
「そりゃ、一緒に過ごす相手がいないから空いてるけど…どうしたの?」
「毎年駅前でクリスマスマーケットやってるでしょ?あれ、良かったら一緒に行かない?」
「…え!?」
自分の耳を疑う。
今、誘ってくれたよね…?
クリスマスなんて大事なイベントに、灯が僕を誘ってくれたよね…!
一緒に過ごせたらなって思っていたから、これは純粋に嬉しい。
もしかして…灯もそう思ってくれていたのかな…。

