僕らフラれた受け同士


***


カラオケボックスから始まった僕達の“恋人ごっこ”は、それからも緩やかに続いていた。

と言っても、クラスは別々。

下駄箱で偶然会った時に挨拶くらいしかする事もない。

だから僕は週に一度、お弁当を持って灯のクラスまで行っている。


「灯、一緒にご飯食べない?」


「うん、行こうか」


嬉しい事に、今のところ灯がその誘いを断った日は無い。

本当は毎日この時間を楽しみたいけど、僕らの関係は恋人ごっこ。

そこら辺、ちょっと遠慮している。

灯の教室前の廊下で、ランチタイムを過ごす場所について僕が話しだす。


「今日どこで食べようか、屋上…いや校庭のベンチ?灯はどこがいいとかある?」


「そうだね、天気も良いし外がいいけど――」


何気ない会話が始まり揃って廊下を歩き出そうとした時…一人の男子生徒が灯の腕を掴んだ。


「ちょっと待て、灯」


聞き覚えのある低い声。

その人物の姿を見た瞬間、僕は目を丸くした。

灯の元彼だ。

確か…名前は――。


「爽…ボクに何か用?」


灯が小首を傾げて元彼…爽君を見た。

爽君は僕をちらりと見たあと、掴んでいた灯の腕をグイッと引っ張り、その体を自身の近くに引き寄せた。


「用?じゃないだろ。お前今日のホームルームの話聞いてた?」


「ホームルーム…あっ…」


何かを思い出した様子の灯が、申し訳なさそうに僕を振り返った。