「うん、楽しかった」
「…そっか」
その言葉が聞けたのなら、充分だ。
当初の目的は灯を楽しませる事だったし、恋人としてのスキンシップのやり方も色々と試せたと思う。
だから、何も悔いは無い。
そういう事にして、友達に戻るんだ。
「えっと…それじゃあ、これにて恋人ごっこは終わり!よくやり遂げました~!さぁ帰ろうか!」
無理矢理に明るく振る舞って、カバンを持ちソファから立とうとする。
「千冬、ちょっと待って」
そんな僕を、灯が呼び止めた。
「ん?どうしたの?」
「あのさ」
そこで言葉を区切って、灯がハッキリと言った。
「延長しない?」
「えっ…でも帰り遅くならない?門限とか大丈夫?」
灯の家がどこか分からないけど、また追加で二時間となると帰りが遅くなってしまう。
そう思ったのだけど、灯は首を横に振った。
「そっちじゃなくて…恋人ごっこの方」
…え?
パチパチと目を瞬かせながら、灯を見た。
彼は呆けた僕の顔をのぞき込むように見つめながら、もう一度ハッキリと告げる。
「ボクとの恋人ごっこ、延長してくれない?千冬に教わりたい事、まだあるんだ」
…今日はなんという一日なんだろう。
彼氏にフラれて、同じくフラれた友達ができて。
恋人ごっこをして、その友達を好きになって。
そして…その相手から恋人ごっこの延長を求められるなんて。
最低な一日だったのか、最高の一日なのか全く分からない。
だけど…。
「うん、僕も…!灯がいいなら、続けたい…!」
空いた心の穴が塞がるほどに僕は今、喜びを噛み締めていた。

