「そう言ったはずだけど」
「その割にはグイグイ来るっていうか…その、積極的っていうか…」
まぁ、とはいえスキンシップの練習だから…。
灯なりに頑張って“恋人ごっこ”に付き合ってくれてるって事なんだろうな。
そう一人で納得しかけた時…灯の口から爆弾発言が飛び出した。
「んー…それは相手が千冬だから、かも」
「へっ?」
思いもしなかった理由に、頭が真っ白になった。
それ、どういう意味?
僕は目を瞬かせる。
灯は二杯目のウーロン茶を口にして天井へ視線を向けた。
「千冬といると、もっと困らせたいって思うんだ」
「理由がクソガキすぎない…?」
「あはは、確かに?だけど…千冬には自然と体が動くんだよね。…嫌だった?」
灯の視線が僕へと移る。
その顔は捨てられた子犬のようにシュンとしていて、僕の胸がますます締めつけられた。
「嫌…じゃない、よ。そもそも恋人ごっこに誘ったのは僕なんだし」
「そっか…なら、良かった」
安心したように灯の顔が穏やかに緩む。
あぁ、もう。
終わらないでほしいなぁ…この時間。
叶わない願いだって分かっているのに…時間が経てば経つほどその思いが募っていく。
僕の気持ちを代弁するかのように甘いメロディーが部屋に流れた。
「あ、前奏が始まったね。千冬の入れた歌?」
「あ、うん…」
マイクを手にして歌い出す。
流行りのラブソングは、まるで灯への告白のようで上手く歌えなかった。

