「…うん、ありがとう」
そう言って笑うと、灯も小さく笑みを浮かべた。
軽快な音を立てて、灯の採点結果がモニターに映る。
点数は…94点。
僕の完全な敗北が決まった。
…色々な意味で。
「灯って歌まで上手いんだね。泣きそうになっちゃったよ」
「へえ、素直に褒めてくれるんだ…カッコよかった?」
冗談めかしてニィと口角を上げる灯に、一瞬だけ胸をときめかして…僕はぷいっと顔を背ける。
「たかだか一回勝っただけで調子のらないでもらえますー?」
「ふーん、じゃあ延長戦する?」
「受けて立つ!」
威勢良く叫ぶ僕。
クスクスと笑う灯の隣で、再びタッチパネル式のデンモクを触る。
次はどんな歌にしようかな…。
選んでいるとポンポンと肩を叩かれ、視線を向ける。
その先にいた灯がメニュー表を開いて僕に見せた。
「どうせだし他にも一緒に食べられる物、追加で注文しよう」
「おぉ、いいじゃん!灯もすっかり“恋人ごっこ”の練習に前向きになったなぁ~」
「あ、まだ続けるんだ?それ」
「もちろん!残り時間までみっちり練習して、スキンシップのコツを掴んでもらわなきゃ」
恋人ごっこ。
その言葉を強調したのは、自分のため。
これはあくまでも、“次の出会い”に繋げるためのごっこ遊びなんだ。
だから…灯にこの想いを伝える事はしない。

