落ち着いた、安定した声。
こちらに優しく語りかけてくるような抑揚の付け方に、心が震えた。
何より歌詞が良い。
聞き手を励まして勇気づけてくれるような温かい言葉の羅列に、灯の甘い歌声がマッチしている。
ふと、灯が僕を見た。
その声がサビのフレーズを歌い上げる。
『君がまた歩けるように、僕が見守るから。』
『だから笑って、笑顔の君が一番好きだ。』
『ほら、一緒にいれば何も怖くないだろう。』
その歌詞と歌声が真っ直ぐ僕へと向けられている事に気づいて、ソファの上で拳をギュッと握る。
たぶん…この応援歌は、僕に向けられた物だ。
それを確信づけるように、灯が優しく目を細めて笑った。
不思議だ。
さっきまであんなにモヤモヤしていた心が、一瞬で満たされたような…そんな感覚。
こんなの、困る。
恋人ごっこなのに、こんなに心臓がうるさくて。
灯で…いっぱいになっていく。
流れていた優しい歌が終わった瞬間、僕は彼に抱き始めている好意を自覚してしまった。
灯がマイクを置く。
一息吐いたあとで、僕の顔をのぞき込んだ。
「…元気、出た?」
ああ、好きだなぁ。
この短時間で分かった灯という友達。
優しくて、気配りもできて、ちょっと強引な彼に、僕の心はすっかりほだされてしまっていた。

