「い、いや~…ちょっと調子出なかったなぁ~!いつもなら90点はいくんだけどね!」
僕は必死に笑顔を作った。
それを見た灯が何か言いかける前に、強引にマイクを手渡す。
「ほら!次は灯の番!頑張れ~」
「…まだ曲すら選んでないよ、待ってて」
灯がマイクを受け取り、タッチパネルを操作して曲を選ぶ。
何を歌うんだろう。
気になって画面をのぞき込む。
お互いの肩がくっついて、僕は少しだけ緊張気味に視線をさまよわせた。
これくらいは、友達としても恋人ごっことしても普通の事…だよね?
灯の指がパネルを滑るようにタップしていく。
その様子を見るに、カラオケボックスに来たのが初めてという感じはしない。
そういえばさっき、ポテトも注文してくれてたっけ。
…こういう所、元彼と来た事あったのかな。
そう思うと、少しだけ胸のモヤモヤが増したような気がした。
「決めた、これにするよ」
灯が選んだのは、僕の知らない歌。
少しして個室に曲が流れ出す。
軽やかなピアノの前奏。
優しい音色がとても心地良い曲だ。
初めて聞くけど…どんな歌だろう。
僕が見守る中、灯がマイクを握って歌い出した。

