僕らフラれた受け同士


音程バーとにらめっこしながら順調に進む歌い出し。

声の抑揚を気にしながら確実に加点を増やしていく。

Aメロが終わり、Bメロへと移る中でふと気づいた。

この歌の内容、歌詞の中に登場する失恋した主人公…どことなく僕のフラれ方と似てる。

突然、恋人に別れを切り出される所とか。

最後の思い出が夏祭りで終わってる所とか…。

結局“そういう事するだけ”の関係だったと気づく所とか。

歌いながら、段々とその声が小さくなっていく。

恐ろしいほど自分の境遇と似ていて、歌えば歌うほどに気分がガクリと下降していくのが分かる。

え…この歌ってこんな歌詞だった?

僕のフラれ方、予言されてたの?

そう思うほどにあの時の…別れを告げられた時の僕の心情とピッタリ重なる歌詞。

頭の中に、吹っ切ったはずのアイツの顔が浮かぶ。

イライラとモヤモヤが胸に渦巻いて、もはや加点なんてどうでもいいから早く終わってくれと念じながらマイクを握った。

ラスサビが終わる。

どうにか歌い終わった僕は、沈んだ気持ちのまま採点を待った。

結果がモニターに表示される。

89点。

AIの加点が高かったのは、良くも悪くも表現力が出せたからだろうか。

何だかそれって、少しむなしい。


「…千冬?」


灯に名前を呼ばれて、ハッとする。