僕らフラれた受け同士


その力は痛みを感じるほどの物ではなかったけど、簡単に振り解ける物でもない。

意外に力、あるんだ。

その事に驚いていると、灯がニコリと笑った。


「千冬…もう一回、ポテト食べさせてくれる?」


「えっ?」


それは思いがけない提案。

つまみ上げたポテトが落ちそうになり、すんでのところで指先に力を入れてそれを阻止する。

灯の方から“恋人ごっこ”に乗り気になってくれるなんて…。

この機を逃してはいけない。

何よりさっきまでの気まずい雰囲気には戻りたくない…僕はポテトをつまんだ手を、灯の口元へと伸ばした。


「どうぞ、あーんして__」


瞬間、灯の顔が近づく。

すっかり慣れた様子で僕の指からポテトを食べる彼。

それを見て指を引っこめようとした…その時。

小さなリップ音と共に、灯の熱い舌が人差し指の腹に付いたままだった塩を舐め取った。

固まる僕を翻弄(ほんろう)するように、その舌先が、今度は親指をペロリと濡らす。

まざまざと見せつけるようにもったいぶって、離れていく熱。

灯が小さく笑った。


「こういう事も…恋人とした?」


どこか色気すら感じる声が、低く室内に響く。


「っ…!!」


体中の熱が顔に集まっていくのを感じ、目眩がするほど体感温度が上昇する。

こんなの…アイツにだってされた事ない。