「はい、灯。これでよく手を拭いて」
「ん?」
そう言って渡したのは、さっきポテトと運ばれてきた使い捨てのお手拭き。
灯は何も不審がる事なく「ありがとう」とそれを受け取り、封を開けて手を拭いた。
僕も同じように手を拭きながら、隣の彼へ言い聞かせるように話し始める。
「いいかな、灯君。これから僕達はポテトを食べさせ合います」
そう言った瞬間、灯の手からお手拭きが落ちた。
うん、動揺するよね。
でも言っただろ?
ここで“恋人ごっこ”するって。
僕は灯へと体を向けて、ポテトを一つ指でつまんだ。
「はい、あーんして!」
「いや、待って…突然すぎない?」
「そう?食べさせ合うって恋人っぽいじゃんか。こういうのにも慣れておけば、次の恋に有利だよ!ほら、練習だと思って!ね!?」
「…はぁ…」
僕の強引さが打ち勝ち、灯は諦めた様子で小さく口を開ける。
恥ずかしいのか、その頬はほんのり赤く染まっていた。
カラオケボックスに来てから、初めて優位に立てた気がしてちょっと嬉しい。
我慢できず、ニヤける顔。
僕は灯の口の中へとポテトを運んだ。
彼がそれをゆっくりと咀嚼するのを見て、満足げに笑う。
「はい、よくできました~!」
「………」
なぜかムッとした表情の灯。
うーん。
今のは恋人っていうか、子供扱いだったかな?

