僕らフラれた受け同士


灯の顔を見ていられなくて、視線が逸れた。


「あっ、僕ドリンクバー行ってくる!待ってて!」


「え?うん…」


ドタドタと足早に個室を出る。

扉を閉めて大きく息を吐いた。

めっちゃくちゃ顔が熱い。

アイツ、こんな行動力あるんだ…。

熱をはかるだけなら手のひらでも良いじゃん!

反則だろ、おでこくっつけるとか!


「落ち着け、落ち着け僕…むしろこれは、灯の進歩を喜ぶ所だ…!」


閉まった扉に背を預けて、小さく呟く。

“恋人っぽい事ができない”灯が…それっぽい事を実行できた。

彼にはこのまま上手く流れにのってもらって、スキンシップのやり方を学んでもらおう。

僕が教える側で、灯は教わる側。

これはあくまでも“恋人ごっこ”なんだから。

それなのに。


「…カッコよかったな」


僕の前髪を撫でる手のひら。

細められた瞳。

小さな口から、もれ出た吐息。

それを思い出して体が熱くなる。


「可愛い顔してるくせに…ズルい」


背だって僕より少し小さくて華奢で。

汗とかかいてるだろうにシャンプーの良い匂いがしてて。

思わず世話を焼きたくなる(はかな)さを放っているのに。

あの瞬間、確かに灯は僕と同じ“男の子”だった。