「人数は二人で、時間は二時間でお願いします。あと機種は__」
手早く受付を終わらせ、伝票を持ち自分達の部屋へと向かう。
ドアを開けて個室に入れば、そこは冷房のきいた密室空間だ。
これなら灯もそんなに恥ずかしくないだろう。
僕は少し固めのソファにどかりと腰を下ろす。
「ほら、灯!隣座って!やるよ!」
目を輝かせながらポンポンとソファの隣を手で叩く。
「さっきから何でそんな乗り気なんだよ…」
そう言いながらも、灯は僕の隣に座ってくれた。
何だかんだ“恋人ごっこ”という突拍子もない発案につき合ってくれるみたいだ。
そういう所、灯って優しいんだなーと思う。
だからこそ…これで自分に自信を持って、新しい恋人を作って幸せになってほしい。
灯は見た目も良くて性格も…たぶん良い。
足りない所があるというなら、それがスキンシップのはずだ。
自分から相手に触る。
それが分からないって灯は言ってた。
触れ合い方が分からないなら、練習すればいい。
僕なら男だし…スキンシップの実践練習をするならちょうどいいんじゃないかな。
「灯はノド渇いてない?何か頼もう。こっちにメニューあるよ」
僕は薄いメニュー表を灯に見せる。
お互い同じ日にフラれた者としての縁だ。
フラれた僕らはここに捨てていって、新しい僕らに生まれ変わろう。

