「猫を触ってたら、勝手にヤキモチ焼いてきてさ。俺にも構えよってボクの手をとって、アイツ、ムスッとしてて…」
灯はそこまで話すと、何かを思い出すように空を見上げた。
僕もつられて上を見る。
夕日に染まったオレンジの空を、二羽のカラスが飛んでいる。
「そういえば、触るのはいつも爽からだったっけ」
呟いた声が思い出を懐かしむように言葉を紡ぐ。
猫のノド元を撫でていた指が止まった。
「アイツにも、こうやって自分から手を伸ばしていれば…違う結果になってたのかな」
再び、灯の指先が猫を撫でる。
僕は何も言えなかった。
彼が恋人に、“恋人っぽい事”ができなかったと言っていたのを思い出す。
後悔…しているのかな。
自分から、スキンシップできなかった事を。
どこか寂しさをまとう灯を見つめる。
僕に、できる事があればいいのにな。
「あっ…」
ふと、灯が声を上げた。
その視線の先を辿る。
そこには、お腹を見せて気持ちよさそうに寝転がる幸運の猫。
小さな黒いハートマークが、ハッキリと見える。
僕はパチパチと目を瞬かせた。
見れちゃった…噂のハートマーク。

