僕の言葉を聞いても、灯は「ふーん」と興味のなさそうな返事をするだけだった。
それでも猫は気になるようで、ちらちらと横目で見ている。
「あの猫さ、お腹にハートマークがあって…懐いた人間にだけ甘えてお腹を見せるんだって」
「それを見たら恋人ができるって?」
「そういう事!僕らもちょっと試してみようよ!」
そう言って灯の制服の袖口を摑み引っ張る。
特に文句も言われず、僕達はブロック塀のすぐそばまで近寄った。
幸運の猫は人自体には慣れているのか、こちらを警戒する様子はない。
それどころか呑気にあくびをして、しなやかな体をググッと伸ばしている。
白い体毛、その腹部に隠されているハートマークはまだ見えない。
座っている状態からどうにか見られないかな…と、淡い期待を寄せて眺める。
猫の“なんだコイツ”みたいな視線が注がれるのもお構いなしにブロック塀の下をうろついていると、観察対象に動きがあった。
「みゃお」
そう一声鳴いたあと、ブロック塀から下りてきた幸運の猫は僕の1メートル先までやってきて毛づくろいを始める。
「わっ!来た!」
まさかこんな近くに来るとは思いもせず、大きな声が出た。
ビクッと体を震わせる猫。
その瞳孔が細くなっていく。
あっ…しまった…。

