僕らフラれた受け同士


「僕は……僕も、灯が好きです……!」


花火が打ち終わり、校庭から拍手と歓声が沸き上がる。

自分に向けられた物ではないと分かっているけれど、“おめでとう”と祝福をされた感覚がして……僕の脳内を痺れさせた。


「好きっ……!灯が大好き……!すき、すき……!」


だばだばと流れる涙もそのままに、歯止めのきかなくなった想いが次々と口から溢れ出た。


「あははっ……熱烈だね、千冬!」


心底おかしそうに笑う灯が、手袋越しの指先で僕の涙を拭った。


「でも――うん、今めちゃくちゃ良い気分」


耳元で囁かれた言葉にずびずびと鼻をすする。

ひっくひっくとしゃくり上げる僕の頬に、灯が両手を沿わせた。


「もう一度、ちゃんとキスして……いい?」


「なっ……!ぼっ……僕、涙や鼻水でこんな酷い顔してるのに!?」


「それでも、千冬はいつだって可愛いよ」


「なにそれ……ズルくない?」


灯が小さく笑って、僕に口づける。

触れるだけの優しいキス。

離れては重ねてを数回繰り返して、僕は何かを忘れている事に気づいた。


「あっ!!」


夜空を背景に二人きりのロマンチックなムードをぶち壊す声が響く。

パチパチと目を瞬かせる灯に、僕は慌ててこう言った。


「灯の着てる執事服!演劇部に返さないといけないんだった!」


「えー……今?」


「今!今すぐ行かないと僕達が怒られる!」


少し不機嫌そうな灯の腕を引っ張って屋上を後にする。

恋人ごっこが終わった早々ドタバタと忙しないけれど……これが僕と灯の“恋人”としての始まりなら、それも悪くない。

こうして高校生最後の文化祭が静かに、そして慌ただしく幕を閉じた。


そして、それから数ヶ月後。


***