僕らフラれた受け同士


背後からヒュウウウ――と音が伸びる。

やがて打ち上がった大輪の花火が、暗い上空を彩った。

だけど僕達は、お互いの顔から視線が離せない。

赤や黄、青や緑の光りに照らされた灯に、僕は感情を抑えて首を振った。


「ぼ、僕なんかと付き合っても、良い事なんか一つもないよ……!爽君と付き合う方が、よっぽど灯のためになる……!」


本当はすぐにでも“僕も好きだよ”と言いたかった。

灯に思いきり飛びついて、“両想いだったんだ”と強く抱き締めたかった。

だけど、灯の幸せを考えた時、頭に浮かぶのはどうしても爽君の顔で……。

素直に頷く事が、できない。


「今からでも遅くないよ、爽君の所に行って――」


うつむいた顔が、灯の手に掴まれた事によって上を向かされる。

小さなリップ音を鳴らして、互いの唇が重なった。

突然の事に上手く息ができず、とろんと呆けた瞳に涙が浮かぶ。

離れていく唇の熱にきょとんとしていると、灯は少し苛立ったように眉をひそめた。


「ボクが選んだのは爽じゃない――千冬だ」


一際大きな花火が夜空に咲く中。

灯は首にかけていたチェーンをたぐり寄せ、その先のペアリングを取り出した。


「これを贈った日から、千冬の特別になれたらいいなって……ずっと思ってた。千冬は?恋人ごっこだから、ペアリングを付けてくれてたの?」


灯の手が、僕のTシャツの下にぶら下がるペアリングに触れる。


「ぼ……僕は……」


僕だって、灯の特別になりたかった。

強く握られた拳。

手のひらに爪が刺さって、鈍い痛みを放った。


「初めて会ったあの日から、今日までずっと……ボクは千冬の事ばかり考えてる。だから、千冬の気持ちを聞かせてほしい……本当の気持ちを!」


僕は息をのんだ。

灯のこんな必死な顔、初めて見る。

そんな顔するくらい……僕の事、想ってくれてるの――?

そう、感じた瞬間。


「っ……!」


限界まで締めつけられた胸が、パチンと弾けた音がした。