「千冬、なんか勘違いしてるでしょ……爽の告白ならきちんと断ったよ、ボク」
その言葉に、僕の見開かれた瞳からポロリと大粒の涙がこぼれた。
今のは、聞き間違い?
断ったって……なんで?
混乱する頭を、灯の手が安心させるように撫でる。
「ボクにとって、アイツはやっぱり“幼なじみ”だから……『気持ちは嬉しいけど付き合えない』って正直に伝えた」
「それじゃあ……なんで恋人ごっこを終わりにするって……」
「偽物の関係を終わらせたかったから」
そう言うと、灯は僕の前で片方の膝を床につけひざまずく。
そして僕の手を優しくとり、甲の部分にそっと口づけを落とした。
まるでおとぎ話に出てくる王子様のような仕草に、僕が目を瞬かせる。
高鳴る鼓動が、灯の次の言葉をせがむ。
それに応じるように彼の唇が言葉を紡いだ。
「もう練習の“ごっこ遊び”じゃ満足できない。千冬と……本物の関係になりたいから、言わせてもらうね」
フェンスの向こう、校庭に集まる生徒達のカウントダウンが聞こえた。
僕の瞳の中に映る灯が、あざとく小首を傾げてふわりと笑う。
「千冬の事が、好きです。ボクと本物の恋人になってくれませんか?」



