目と目が合う。
そこに立っていた人物が、僕に優しく笑いかけた。
「また、泣いてたの?」
「と、灯……?」
執事服を着たままの彼は、僕の目の前にしゃがみ込んで手を伸ばす。
綿の手袋をはめた指先が僕の目尻に浮かんだ涙をすくい取った。
「なんで……僕、ここにいるなんて一言も……」
「校庭で千冬を探してたら、屋上に人影が見えたんだ。それで、もしかしたらって思って来てみたら……当たりだったね」
「っ……」
見つけてくれた事への嬉しさと、今会いたくなかったという気持ちが交差して視線を落とす。
無言の僕の隣に、灯が腰を下ろした。
二人きりの空間に、下から聞こえる生徒達の賑やかな話し声が響く。
「ね、千冬。初めて会った時の事、覚えてる?」
静寂を断ち切るように灯が呟いた。
「あの時も千冬は泣いてたよね」
穏やかな口調で語る灯に、僕は小さく頷いた。
そう言われたら、確かにそうだ。
泣いてる所を見られて、声をかけてくれて。
灯がハンカチを渡してくれて、突然にフラれた僕の話を聞いてくれたんだっけ。
灯の手が僕の髪の毛をサラサラと撫でる。
「あのね、話したい事があるんだ」
僕の上げた視線が、弱々しく灯を見つめる。
彼は柔らかく目を細めたあと……こう言い放った。
「ボクとの“恋人ごっこ”を、終わりにしてほしい」



