それはまだ蒸し暑い二学期の始まり。
クラスメイトが全員帰った放課後の教室。
「悪ぃ千冬、俺カノジョできたんだ」
そう言って悪びれる素振りもなく笑う恋人に、僕は呆然とする。
いや、“元”恋人か。
真っ白な頭の中、僅かに残った冷静な部分がツッコミを入れた。
「ねぇ~、お腹すいたぁ…もう行こう?」
元恋人の腕に絡みつく女子生徒は、声も態度も鼻につくような甘ったるさを放っていた。
「おう、じゃあな千冬!お前も新しいやつ見つけろよ~」
去り際にぽんと頭を撫でていく、その無神経さが腹立つ。
触るな。
もう僕の恋人じゃないくせに。
でもそれを振り解く事ができなかったという事は、やはり未練が残っているという事なんだろうか。
どちらにしても僕はフラれた。
最悪だ。
この前まで僕と夏祭りデートしてたくせに。
いつの間にか別の相手を作って、しかも。
よりにもよって、その相手に女子を選ぶなんて。
「お前から告ってきたくせに…何だよ」
滲む視界に歯を食いしばる。
口内に鉄の味が広がり、引きつった声がもれそうになった時…隣のクラスから大きな声が聞こえた。
「だから!お前のそういう所が分かんねぇって言ってんだよ!」

