ファインダー越しの、

「由良ちゃ〜ん……あれ、なんなの」
 中村が引き攣った顔で遠くの真崎を指差す。
 以来、真崎は陸上部を見学するようになった。以前盗撮した位置に真崎は行儀良く立っている。俺がひとりきりになる瞬間を狙っているのだろう。
「俺がひとりのときだったら撮ってもいいって言ったんだ」
「なんでそんなこと言ったんだよ……甘いぞ、由良」
「もう部活に打ち込む時期じゃないし、引退も近いし好きにすればいいと思って」
「お前ねえ、なんではっきり断らなかったんだ?いやあいつ、もしかして逆ギレするタイプ……なのか?どうなんだ?というかあいつはあいつでどうしたよ、新聞部」
 中村がぶつぶつと気味悪そうに呟いている。
「新聞部の活動はあらかじめ決まった被写体がほとんどなんだそうだ。だから限られた時間で撮っているらしい」
「へえ。じゃあ普段持ち歩いてるのは飾りなわけだ。先生もよく許してるよね。ね、由良。あいつとずいぶん仲良くなったんだね」
 責められているように感じるが、中村は俺のことを心配してのことだろう。俺だって正体不明の感覚にドギマギしているし、もし俺が中村の立場だったら同じように警戒したはずだ。
「まあ、悪いやつじゃない」
 ふと真崎の方を見るとさっきと同じ姿勢でカメラを抱えているようだった。ここからは見えない。でもきっと情熱的な瞳をしているのだろう。俺の一瞬を逃すまいと、でも俺の言いつけを守ってシャッターは切らずに『おあずけ』している。今までもきっとあの熱量で俺を見ていたのかもしれない。どうして気付けなかったのか。
「……なんなんだよお前ら。気持ち悪いよ。ずりーよ。……一緒にいたのは俺なのに」
 中村が背中を向けた。そう、気持ち悪いのかもしれない。俺の写真をまた撮ってほしい。ほしくない。
 心の深いところに無遠慮に触れられて以来、俺はおかしくなってしまった。