ファインダー越しの、

「お前さ、真崎に撮られてなかった?」
 同じ陸上部の中村が制服に着替えながら話しかけてきた。
「あー……そんな気がした」
「カメラ構えてんなーって見てたら驚いたよ。お前ら接点ないだろうし。あいつ、新聞部なんだよね。ゴシップ記事でも作る気か?お前、なんかやらかした?」
「やらかしたって……なんも心当たりないよ。なに、真崎って写真部じゃないのか」
 一眼レフを大事そうに抱える大柄な同級生は学内で有名だった。
 中村は両手の親指と人差し指で長方形を作り、自身の目に近づける。
「新聞部なの、意外だよな。あれ、目立つし。鑑賞用かと思ってたんだけど」
「観賞用?」
「うん、撮ってるとこ、見たことなくてさ。撮らないの?って聞いてもうん、しか言わないし。手持ち無沙汰で持ってんのかなって」
 一眼レフなんて高級なモノをか?と思いつつもふうん、と生返事をすると、バタンと自分のロッカーを閉めた中村が声を潜ませ、顔を寄せてきた。
「まあ、悪い奴じゃないと思うけどさ、俺、ちょっと話しておこうか?ほら、さすがにいきなり撮るのはさ」
「いや、直接聞くよ、ありがとう」
 中村は近づけていた体をパッと放し、にやっと笑いひらひらと手を振って更衣室を出て行った。目の奥の感情は読めない。納得しただろうか。
 あいつならいきなりカメラをひったくりかねない。勝手に自分の写真を撮られたのであれば、いい気はしないがあまり大事にしたくない。それに、撮ったという確実な証拠もないので濡れ衣かもしれない。
 中村の世話焼きっぷりは副部長としてふさわしく、助けられることもあるが、極端な行動に現れることがある。
 ふう、と息をついて同じく更衣室を出た。さっきまでの心地よい疲労感とは別の重さが体に残った。