ファインダー越しの、

 とんとん、とその場で軽くジャンプ。足首や手首を回しながらバーを見つめる。2メートル20センチ。見慣れた目標値は俺を無言で待ち構えている。深く息を吸うと熱気が肺に広がる。小さく砂埃を舞い上げる風がなりをひそめ、校庭のざわめきが遠のいていく。
 ――今だ。
 直線からはじまり、弧を描いて駆け出す。わずかに沈み込み地面を蹴り上げると、俺の体は踊るようにくるりとバーに背中をむけ、回転する。
 ちかっと太陽と目が合ったのも束の間、わずかな衝撃とともにカランとバーが転がる。いつも通りの光景にはもう何も感じなくなった。
 マットの上で大の字になる。
 今日の青空は俺を天まで連れて行ってくれそうだ。
 背面跳びから見える一瞬の景色が大好きだ。
「……ん?」
 視界の端の黒い塊に気付いた。
 カメラを構えたのっそりとした姿は隣のクラスの――
「真崎?」
 はっと顔を上げると、真崎らしき人物は勢いよく踵を返し校舎の中へ駆けて行った。
「え、おい!」
 慌てて追いかけようとすると「何してんだ由良。早く集合!」と顧問に呼び止められる。
 自分を撮られたのかと、反射的に真崎の名前を呼んでしまったが自意識過剰だったかもしれない。
 カメラを持つ男が消えて行った方角を見、体操着の胸のあたりをぎゅっと掴む。