私は綾奈と二人きりになった。
二人きりの音楽室は、広くて、しんとしている。
先に沈黙を破ったのは綾奈の方だった。
「ごめんね、秘密に首を突っ込んじゃって」
綾奈は少しだけ申し訳なさそうな顔をしていた。
まさか綾奈に謝られるとは思っていなくて、私は驚いた。
「そんな、私こそごめん。隠すつもりじゃなかったんだけど、雪谷くんとの約束だったから……」
本当に申し訳なかった。いつも一緒にいる綾奈に隠し事をしてしまって。
「いいよ、しょうがないでしょ。変わった事情なんだから」
綾奈は私の目を見て言った。
「そりゃ、仲間外れにされてるかもって思ったときは、気分が悪かったよ。でも、そうやって大事な秘密を預かるくらい、華香がイケメンツートップと仲良くなっているのも、何だか嬉しいんだよ」
その言葉を聞いて、何だか複雑な気持ちになった。
私のしたことが、綾奈を傷つけて、でも喜ばれて? ちょっと難しいな……。
ただ、私はそこでハッとした。綾奈って、加藤くんのことが気になってたんじゃなかったっけ。
「そうだ、あのね。私、加藤くんとかなり仲良くなったんだけど、何もないからね! 本当に!」
「ああ、加藤くん? 別に私は大丈夫だよ」
綾奈がそんなことを言うので、私は拍子抜けしてしまった。
「え、そうなの? 結構、好き好きオーラ出してなかったっけ?」
すると、綾奈は頭をポリポリとかきながら言った。
「前はそうだったけど……。いや実は、私、彼氏ができそうなんだよね」
「ええええ⁉」
私は飛び上がって驚いた。
「そんなの聞いてない!」
「いやだって、まだ付き合ってるわけじゃないから……」
綾奈はくねくねしながら言った。おお、これはきっとマジなやつだな……。
「なんだよ、綾奈にも隠し事があったってわけ?」
そして私たちは目配せしあってから、大きな声で笑った。
その後、綾奈から詳しい話を聞いた。
気になる相手は、塾で同じクラスの三上くん。
帰り道が途中まで一緒で、よく話をするそうだ。
そして最近、親密さが徐々に増してきているらしい。
「まつ毛が長いのよ。横顔がきれいで。ねえ……」
うっとりとした表情で綾奈は語った。彼女の全身からハートが飛び出しているような錯覚を覚える。
「うふふ、好きなんだね」
「ええ、まあ、うん……」
「彼氏になりそうってことは、え? 告るの? キャー!」
私は鼻息を荒くして聞いた。
「いやあ、ねえ……」
綾奈はもじもじしている。
「ほら、結局、向こうがどう思ってるかわかんないからねえ……。告って、実は勘違いでした、だと悲惨でしょう。そりゃあ向こうから告られたら間違いなくオーケーなんだけど、ねえ」
その話を聞いて、私は思った。
……何だろう。綾奈らしくないな。
私の知っている綾奈は、恋バナが好きで陽気な女の子。
もしこれが私の話だったら、綾奈は「いいからさっさと告れよ!」って言うと思う。
それなのに、今の綾奈は恋に臆病な乙女だ。
もしかしたら、これが本気で恋をするってことなのかも……?
私は綾奈の手を取り、まっすぐ目を見て言った。
「綾奈、私は応援してます。何かあったら、なんでも相談してね」
「……うん」
綾奈の返事はしっとりとしていた。恋はこんなにも人を変えてしまうのか。
友人の本気の恋に、私はワクワクとドキドキが止まらなかった。
二人きりの音楽室は、広くて、しんとしている。
先に沈黙を破ったのは綾奈の方だった。
「ごめんね、秘密に首を突っ込んじゃって」
綾奈は少しだけ申し訳なさそうな顔をしていた。
まさか綾奈に謝られるとは思っていなくて、私は驚いた。
「そんな、私こそごめん。隠すつもりじゃなかったんだけど、雪谷くんとの約束だったから……」
本当に申し訳なかった。いつも一緒にいる綾奈に隠し事をしてしまって。
「いいよ、しょうがないでしょ。変わった事情なんだから」
綾奈は私の目を見て言った。
「そりゃ、仲間外れにされてるかもって思ったときは、気分が悪かったよ。でも、そうやって大事な秘密を預かるくらい、華香がイケメンツートップと仲良くなっているのも、何だか嬉しいんだよ」
その言葉を聞いて、何だか複雑な気持ちになった。
私のしたことが、綾奈を傷つけて、でも喜ばれて? ちょっと難しいな……。
ただ、私はそこでハッとした。綾奈って、加藤くんのことが気になってたんじゃなかったっけ。
「そうだ、あのね。私、加藤くんとかなり仲良くなったんだけど、何もないからね! 本当に!」
「ああ、加藤くん? 別に私は大丈夫だよ」
綾奈がそんなことを言うので、私は拍子抜けしてしまった。
「え、そうなの? 結構、好き好きオーラ出してなかったっけ?」
すると、綾奈は頭をポリポリとかきながら言った。
「前はそうだったけど……。いや実は、私、彼氏ができそうなんだよね」
「ええええ⁉」
私は飛び上がって驚いた。
「そんなの聞いてない!」
「いやだって、まだ付き合ってるわけじゃないから……」
綾奈はくねくねしながら言った。おお、これはきっとマジなやつだな……。
「なんだよ、綾奈にも隠し事があったってわけ?」
そして私たちは目配せしあってから、大きな声で笑った。
その後、綾奈から詳しい話を聞いた。
気になる相手は、塾で同じクラスの三上くん。
帰り道が途中まで一緒で、よく話をするそうだ。
そして最近、親密さが徐々に増してきているらしい。
「まつ毛が長いのよ。横顔がきれいで。ねえ……」
うっとりとした表情で綾奈は語った。彼女の全身からハートが飛び出しているような錯覚を覚える。
「うふふ、好きなんだね」
「ええ、まあ、うん……」
「彼氏になりそうってことは、え? 告るの? キャー!」
私は鼻息を荒くして聞いた。
「いやあ、ねえ……」
綾奈はもじもじしている。
「ほら、結局、向こうがどう思ってるかわかんないからねえ……。告って、実は勘違いでした、だと悲惨でしょう。そりゃあ向こうから告られたら間違いなくオーケーなんだけど、ねえ」
その話を聞いて、私は思った。
……何だろう。綾奈らしくないな。
私の知っている綾奈は、恋バナが好きで陽気な女の子。
もしこれが私の話だったら、綾奈は「いいからさっさと告れよ!」って言うと思う。
それなのに、今の綾奈は恋に臆病な乙女だ。
もしかしたら、これが本気で恋をするってことなのかも……?
私は綾奈の手を取り、まっすぐ目を見て言った。
「綾奈、私は応援してます。何かあったら、なんでも相談してね」
「……うん」
綾奈の返事はしっとりとしていた。恋はこんなにも人を変えてしまうのか。
友人の本気の恋に、私はワクワクとドキドキが止まらなかった。



