イヤリングの捜索を通じて、私と雪谷くんと加藤くんの間に秘密が生まれた。
私が折った折り紙を、雪谷くんが動かす。不思議な力の秘密。
加藤くんはそれを楽しんでいるようで、ある日、また見せてほしいとお願いされた。
放課後、私たち三人は誰もいない音楽室に集まった。
合唱部が部活で使うことがあるけど、活動日が少ないのでほぼ空き教室になっているらしい。
いやあ、まさか男子と、しかもイケメンツートップと放課後に一緒にいるなんて。以前までの私だったら考えられなかったな。
「何を折ってくれるのかなぁ? 華香ちゃんのチョイスでいいよ」
「お前、いい加減にしろよ」
雪谷くんはあまり気乗りしないみたいで、加藤くんに軽く怒っていた。
「いいよいいよ」
でも、私は喜んで折ってあげる。人から折り紙を折ってとお願いされるのが、とても嬉しい。
今日は何を折ろう。せっかく動くんだから、動きの面白そうなものがいいかな?
そうやって、加藤くんが喜びそうな作品を考える時間すらも楽しい。
ようし、決まったぞ。
私は黄色い折り紙を広げ、てきぱきと蝶を折った。
それを雪谷くんに渡し、優しく息を吹きかけられると、温かい光に包まれた折り紙の蝶がひらひらと舞い始めた。
「おお、やっぱすごいな!」
加藤くんは無邪気にはしゃいでいる。
「これさ、めちゃくちゃいっぱい折ったら、幻想的な風景が作れそうじゃない?」
「いやそんな、私は折り紙生産工場じゃないんで……」
私は苦笑いし、雪谷くんはため息をついた。
加藤くんは折り紙の蝶を捕まえた。
「この蝶、もらっていい?」
「どうぞ。でも、夜には止まっちゃうかもよ」
「それはそれで刹那的でいいじゃん」
刹那的。加藤くんが急にかっこいい言葉を使ったので、私は少し笑ってしまった。
すると、音楽室のドアが開いた。
綾奈だった。
加藤くんは折り紙の蝶をさっとポケットの中に隠した。
「華香」
「ど、どうしたの?」
私はなるべく平静を装って言った。
「いや、どこに行ったのかと思ってさ。クラスの子に聞いたの」
綾奈は音楽室の中をぐるりと見回した。
「何? 三人でバンドでもやるの? 違うか。楽器がないね」
私は背中に冷や汗をかき始めた。目が泳いでしまう。
どうしよう。雪谷くんの秘密がバレちゃう……!
「華香ちゃんに、折り紙を見せてもらってたんだよ。それだけ」
加藤くんが状況を説明した。嘘は言っていない。でも。
「へえ、ここで」
綾奈は冷たく切るように言った。
まったくその通りだ。わざわざ音楽室で折り紙を折るなんておかしい。
私たち三人はすっかり困ってしまい、まごついていた。
「ねえ華香」
綾奈は私にじりじりと近づいてきた。きっと、何かを隠していることに気がついている。
私は隠し事をしていた罪悪感と、雪谷くんを裏切れない気持ちですり減ってしまいそうになった。
「……華香、最近楽しそうだよね」
私の目の前まで来た綾奈は、しょんぼりした顔で言った。
ん?
綾奈の口から出た言葉は、私が思っていたものと違った。
てっきり、秘密を暴かれると思っていたのに。
綾奈は床を見つめながら言った。
「なんかさ、私の知らないところで、何かしてるんだろうな、って思ったらさ」
私は困惑しながら綾奈の言葉に耳を傾けた。
何を返せばいいかわからず、口をぱくぱくさせてしまった。
「私には教えてくれないんだな、って思ったらさ……!」
その言葉は徐々に悲しみを帯びてきた。その声は、私の心にまっすぐ刺さった。
私は罪悪感が膨れ上がってきて破裂しそうだった。どうしよう……!
「俺のせいだ」
音楽室に低い声が響いた。雪谷くんが突然口を挟んだのだ。その声に、綾奈は顔を上げた。
雪谷くんは眉をひそめ、申し訳なさそうな顔をしていた。
「黒田、俺のせいなんだよ。俺が秘密にしてほしいって言ったから。ごめん」
「雪谷くん……」
「加藤、蝶を見せて」
言われた通りに、加藤くんはポケットから折り紙の蝶を出した。
その蝶は加藤くんの手を離れて、まるで本物のようにひらひらと舞い始めた。
綾奈は目を丸くして蝶を見つめた。
「これ、もしかして折り紙?」
「ああ、こういうことなんだよ」
「え? ごめん、どういうこと?」
まったく。本当にどういうことだよ……。また雪谷くんの悪い癖が出てる。
「あの、綾奈、説明するね……」
私は綾奈に全てを話した。雪谷くんのおばあちゃんの不思議な力のこと。雪谷くんにもその力があって、なぜか私の折り紙だけが動かせること。そして、それを周囲に隠していること。
綾奈は、私の話をあっけにとられながら聞いていた。
「はあ……ちょっと信じられないけど……そうなんだ」
「あの、二人とも。俺らもう帰るね」
私の説明が終わると、加藤くんは言った。
「蝶、ありがとな。ほら行くぞ淳。じゃ、また明日」
そう言って、雪谷くんを引きずって音楽室から去ってしまった。
私が折った折り紙を、雪谷くんが動かす。不思議な力の秘密。
加藤くんはそれを楽しんでいるようで、ある日、また見せてほしいとお願いされた。
放課後、私たち三人は誰もいない音楽室に集まった。
合唱部が部活で使うことがあるけど、活動日が少ないのでほぼ空き教室になっているらしい。
いやあ、まさか男子と、しかもイケメンツートップと放課後に一緒にいるなんて。以前までの私だったら考えられなかったな。
「何を折ってくれるのかなぁ? 華香ちゃんのチョイスでいいよ」
「お前、いい加減にしろよ」
雪谷くんはあまり気乗りしないみたいで、加藤くんに軽く怒っていた。
「いいよいいよ」
でも、私は喜んで折ってあげる。人から折り紙を折ってとお願いされるのが、とても嬉しい。
今日は何を折ろう。せっかく動くんだから、動きの面白そうなものがいいかな?
そうやって、加藤くんが喜びそうな作品を考える時間すらも楽しい。
ようし、決まったぞ。
私は黄色い折り紙を広げ、てきぱきと蝶を折った。
それを雪谷くんに渡し、優しく息を吹きかけられると、温かい光に包まれた折り紙の蝶がひらひらと舞い始めた。
「おお、やっぱすごいな!」
加藤くんは無邪気にはしゃいでいる。
「これさ、めちゃくちゃいっぱい折ったら、幻想的な風景が作れそうじゃない?」
「いやそんな、私は折り紙生産工場じゃないんで……」
私は苦笑いし、雪谷くんはため息をついた。
加藤くんは折り紙の蝶を捕まえた。
「この蝶、もらっていい?」
「どうぞ。でも、夜には止まっちゃうかもよ」
「それはそれで刹那的でいいじゃん」
刹那的。加藤くんが急にかっこいい言葉を使ったので、私は少し笑ってしまった。
すると、音楽室のドアが開いた。
綾奈だった。
加藤くんは折り紙の蝶をさっとポケットの中に隠した。
「華香」
「ど、どうしたの?」
私はなるべく平静を装って言った。
「いや、どこに行ったのかと思ってさ。クラスの子に聞いたの」
綾奈は音楽室の中をぐるりと見回した。
「何? 三人でバンドでもやるの? 違うか。楽器がないね」
私は背中に冷や汗をかき始めた。目が泳いでしまう。
どうしよう。雪谷くんの秘密がバレちゃう……!
「華香ちゃんに、折り紙を見せてもらってたんだよ。それだけ」
加藤くんが状況を説明した。嘘は言っていない。でも。
「へえ、ここで」
綾奈は冷たく切るように言った。
まったくその通りだ。わざわざ音楽室で折り紙を折るなんておかしい。
私たち三人はすっかり困ってしまい、まごついていた。
「ねえ華香」
綾奈は私にじりじりと近づいてきた。きっと、何かを隠していることに気がついている。
私は隠し事をしていた罪悪感と、雪谷くんを裏切れない気持ちですり減ってしまいそうになった。
「……華香、最近楽しそうだよね」
私の目の前まで来た綾奈は、しょんぼりした顔で言った。
ん?
綾奈の口から出た言葉は、私が思っていたものと違った。
てっきり、秘密を暴かれると思っていたのに。
綾奈は床を見つめながら言った。
「なんかさ、私の知らないところで、何かしてるんだろうな、って思ったらさ」
私は困惑しながら綾奈の言葉に耳を傾けた。
何を返せばいいかわからず、口をぱくぱくさせてしまった。
「私には教えてくれないんだな、って思ったらさ……!」
その言葉は徐々に悲しみを帯びてきた。その声は、私の心にまっすぐ刺さった。
私は罪悪感が膨れ上がってきて破裂しそうだった。どうしよう……!
「俺のせいだ」
音楽室に低い声が響いた。雪谷くんが突然口を挟んだのだ。その声に、綾奈は顔を上げた。
雪谷くんは眉をひそめ、申し訳なさそうな顔をしていた。
「黒田、俺のせいなんだよ。俺が秘密にしてほしいって言ったから。ごめん」
「雪谷くん……」
「加藤、蝶を見せて」
言われた通りに、加藤くんはポケットから折り紙の蝶を出した。
その蝶は加藤くんの手を離れて、まるで本物のようにひらひらと舞い始めた。
綾奈は目を丸くして蝶を見つめた。
「これ、もしかして折り紙?」
「ああ、こういうことなんだよ」
「え? ごめん、どういうこと?」
まったく。本当にどういうことだよ……。また雪谷くんの悪い癖が出てる。
「あの、綾奈、説明するね……」
私は綾奈に全てを話した。雪谷くんのおばあちゃんの不思議な力のこと。雪谷くんにもその力があって、なぜか私の折り紙だけが動かせること。そして、それを周囲に隠していること。
綾奈は、私の話をあっけにとられながら聞いていた。
「はあ……ちょっと信じられないけど……そうなんだ」
「あの、二人とも。俺らもう帰るね」
私の説明が終わると、加藤くんは言った。
「蝶、ありがとな。ほら行くぞ淳。じゃ、また明日」
そう言って、雪谷くんを引きずって音楽室から去ってしまった。



